僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「どーぞ。今開けるんで」
『ああ、すまないね。確か7階だったね?』
なんだ、知ってんのか。大丈夫そうだな。
俺は少し警戒していたが、マンションの場所も住んでる階も知っているならと、あっさり警戒を解いた。
「701号室っす」
それだけ言って、俺は嫌々ながらも彗の育ての親をマンションに入れた。
「……こんちは」
めんどくさいが再び私服に着替え、髪を結ってから玄関を開けた。
「突然来て申し訳ない」
そこに立っていたのは、白髪混じりの短髪をジェルで後方に固めた、中年のおじさん……と、その妻だろうか。肩までの黒髪は緩いウェーブがかかっていて、どちらも私服だ。
「……どーぞ」
一言だけ言って廊下を歩くと、ドアが閉まる音がした。ちらりと見遣れば、ふたりは辺りを見渡してコソコソと何か話している。