僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


ひとりで頭を抱えていたって何も変わらないのは分かっていたが、この状況に耐えられそうにない。それならと思い凪にも電話を掛けたのに、全く繋がらなかった。


ついてねー……、俺。


「すんません。繋がんないっす」


諦めてリビングに戻ると、なぜか俺に不機嫌な顔が向けられる。


「……では待たせてもらうが、構わないかね」


出来れば帰ってくれ。

なんて言えるはずもなく、「どーぞ」と言うしかなかった。




「もしもし有須!?」


案の定5分も耐えられず、俺は洗面所に逃げ込み有須に電話を掛けた。


『祠稀? どうしたの慌てて』

「今どこ! 帰ってこい今すぐっ」


ボソボソと小声で話すが、状況を理解してない有須は呑気に答える。
< 159 / 641 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop