僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


『時間はないけど、焦らないで探そう』


そう言ってくれた両親に甘えて、妥協せず地道に入居先を探していた。


いくつか候補があがっても決められずに悩んでいた昨日の深夜、たまたま見つけた同居人募集のホームページ。


あたしにしては凄くめずらしく、一発で“これだ”と思えたもの。


いきなりのひとり暮らしは寂しかったから、募集要項に惹かれたのもある。でもその下に添えられた文章に、寄り一層惹かれた。


【幸せに、なるために
 幸せで、あるために】


思い出しても胸が熱くなる理由は、自分でよく分かってる。


気付けばメールを作り、ドキドキしながら送信ボタンを押した。


たかがメールを送るだけなのに、あたしにとってそれは驚くほど行動的で、踏み出せた1歩だった。


そういうことも含めて、同居人として選ばれたい。選んでほしい。


あたしは幸せを求めていいのか……知りたい。


ううん。そうじゃない。


幸せになると、決めたんだ。


いつの間にかギュッと強く握っていた携帯をテーブルに置き、紅茶を飲みながらナギさんからの返事を待った。


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