僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
◆Side:有須
「ただいまっ」
祠稀からの電話を受けたあたしは急いでマンションに帰り、肩で息をしながらリビングへ入った。
「おかえり……」
な、なんか祠稀……やつれた?
「おじゃましてます」
「あ、こんにちはっ」
中年の男性が頭を下げたので、慌てて自らの頭も下げる。
このふたりが彗の、育て親ってこと……だよね。育て親って……本当の両親は……?
色々考えながらも先に着替えてこようと思ったけど、祠稀が「行くんじゃねぇ」と目で訴えてきたので、諦めることにした。
よっぽど気を遣ったのか、祠稀は疲れきった顔をしている。
「祠稀、それ珈琲? 煎れ直してもらっていい?」
「……おう」
祠稀は助かったって感じでテーブルに置いてあったカップを取り、キッチンへ向かった。変わりにあたしがテーブルを挟んで、おじさんとおばさんの前に座る。
「今日は彗に用事があっていらっしゃったんですか?」
同性ということもあり、おばさんに笑顔で問い掛けた。けれどおばさんは一瞬だけ目を合わせただけで、すぐにあたしから目を逸らしてしまう。