僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「……ええ、まあ」
声色で分かるほど、おばさんは機嫌がよくないみたいだ。
ちらりとおじさんの顔も窺ってみても、やっぱり目は合わないし、おばさんと同じように機嫌はよくなさそう。
「そ、そうだったんですか。もうじき帰ってくると思いますからっ」
「ええ」
「……」
あたしの笑顔は見事に固まる。
……祠稀の気持ち、分かったかも。いや、でも、ただ単に無口なだけかもしれないし……不機嫌に見えるのは、失礼だけど元からそう見える顔とか……。
「……どーぞ」
あれこれ理由づけしていると、祠稀が珈琲を持って現れた。マグカップがテーブルに置かれて、祠稀はあたしの隣に腰掛ける。
「「……」」
沈黙……キツいかも……。
あたしは必死に話題を探して、彗が帰ってくるまでなんとか持ち堪えようとした。