僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「……育ての親って言ってましたけど、彗の両親っていないんすか?」


隣で黙っていた祠稀が、少しピリピリしながら問い掛けた。


……それは、勝手に聞いていいものなのかな。だけど多分、そういうことなのかなって、帰宅途中には考えていた。


「ああ……聞いてなかったのか? 彗の両親は事故で亡くなったんだよ。もう10年以上前の話だが」


10年以上前……そんなに? ってことは、5歳くらいの時に?


「じゃあその後、ずっとあなた方が彗を育てたってことっすか?」

「……いや。私たちは2年ほど世話してやっただけだ。彗は親戚の間で、代わる代わる世話してもらってたからな」

「「……」」


おじさんの言葉に、あたしと祠稀は黙ってしまった。


聞いてはいけないことを聞いてしまった罪悪感と、この家に来るまでの、彗の寂しさを目の当たりにしてしまったようで……なんとも言えなかった。


……世話してやった、とか。世話してもらってた、とか。


深い意味はないのかもしれないけど……もっと、言い方ってものがあるんじゃないのかなと思えて仕方ないのも事実だった。

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