僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
――――…
「ふーん。じゃあ遺産はもう守られた同然なわけだ?」
「多分ね。はったりだけど、効き目はあると思うんだよね」
昼休みの時間、あたしは祠稀と自販機の前に来ていた。
「彗に聞いたけど、遺産の他に保険金もあんだろ? ……狙われるわけだよな」
祠稀は溜め息をついて、苺オレとか女の子みたいなものを買ってる。あたしはお茶と紅茶を買って、腕に抱えた。
「保険金の行方は考えたから。家賃に消えたって言えば大丈夫だと思うんだけど……甘いかなぁ」
「ガキの彗から家賃取るなんてありえねぇよな。胸くそワリィ」
祠稀は軽く舌打ちをしてから教室へ歩き出し、その隣を歩く。
「で? マジで今日来んの?」
「来ると思うよ。そんな遠くに住んでるわけじゃないみたいだし、また来るって言ってたじゃん。あの様子だと、よっぽど切羽詰まってそう」
「……確かに」
来るなら来ればいい。望むものを渡す気なんて、これっぽっちもないんだから。