僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
言っちゃなんだけど、あたしは特別頭がいいわけじゃないし、宿題とかテストなんて滅べばいいと思ってる。
ほんの数ヵ月前まで受験生で、必死に毎日勉強してたっていうのに、高校に入ってもすぐ試験があるなんて拷問だ。
「もういーや。やめやめ! 教科書なんて見たくないっ」
数学の教科書を閉じて机にしまおうとすると、彗に見られた。持って帰らないんだ、と言いたげな目。
「ああもう分かったよ! 持って帰りますぅー! 勉強しますぅーっ」
「……教えてあげるから怒らないでよ、凪」
放課後に残って勉強しようって誘ったのはあたしなんだけど……みんなの余裕っぷりに心が折れそうなんだもん。
「最低よ、彗。頭よくないって言ってたくせに、小テストいつも満点とか何! 裏切り者っ」
「腹減った……」
「聞いてんの!?」
もう嫌! だいたい頭のいい彗がこんな普通レベルの高校にいること自体おかしい!
ムスッとするあたしを促すように、祠稀が立ち上がる。
「はいはい、早く帰ってまったりと過ごしますよー」
「凪っ、あたしも教えられる範囲なら教えるから、頑張ろうねっ!」
なんであたしだけバカなんだろう……。