僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「はーあぁー……」
「「「………」」」
マンションに帰り、夕飯時。あたしの頭の中は間近に迫ったテストでいっぱいだった。
「溜め息つくんじゃねぇよ。辛気くさくなんだろーが」
お椀と箸を持つ祠稀を一度見てから、すぐに逸らす。
「はあぁぁぁ……」
「上等だコラ。つうか勉強なんて一夜漬けでなんとかなるだろ」
「なんですか自慢ですか。祠稀みたいに単純な脳みそじゃないの、あたしは!」
ギロリと睨むものの、祠稀は呆れたように空になった皿を流し台に運んだ。
「どーしてテストなんてものがこの世にあるわけ? 必要? 不必要ですよ。あはは」
乾いた笑いをもらせば、有須は気遣ってくれているのか、オロオロした表情を見せる。
「な……凪っ」
「……ほっといていいよ。現実逃避してるだけだから」
なんて言い草なの彗。仮にもお姉ちゃんに、なんてこと言うの。
ああ、もう……赤点のオンパレードが見える……。
「ゲームでもしよう」
うん、それがいい。脳の活性化にもなるしね!
試験勉強という単語が完全に頭の中から排除されたあたしに、3人分の視線が突き刺さるけど気にしない。
赤点取りたくないけど。一夜漬けでどうにかなる次元じゃないけど。気が向かないのに勉強したって頭に入るわけないじゃん?