僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「はーあぁー……」

「「「………」」」

マンションに帰り、夕飯時。あたしの頭の中は間近に迫ったテストでいっぱいだった。


「溜め息つくんじゃねぇよ。辛気くさくなんだろーが」


お椀と箸を持つ祠稀を一度見てから、すぐに逸らす。


「はあぁぁぁ……」

「上等だコラ。つうか勉強なんて一夜漬けでなんとかなるだろ」

「なんですか自慢ですか。祠稀みたいに単純な脳みそじゃないの、あたしは!」


ギロリと睨むものの、祠稀は呆れたように空になった皿を流し台に運んだ。


「どーしてテストなんてものがこの世にあるわけ? 必要? 不必要ですよ。あはは」


乾いた笑いをもらせば、有須は気遣ってくれているのか、オロオロした表情を見せる。


「な……凪っ」

「……ほっといていいよ。現実逃避してるだけだから」


なんて言い草なの彗。仮にもお姉ちゃんに、なんてこと言うの。


ああ、もう……赤点のオンパレードが見える……。


「ゲームでもしよう」

うん、それがいい。脳の活性化にもなるしね!


試験勉強という単語が完全に頭の中から排除されたあたしに、3人分の視線が突き刺さるけど気にしない。


赤点取りたくないけど。一夜漬けでどうにかなる次元じゃないけど。気が向かないのに勉強したって頭に入るわけないじゃん?

< 294 / 641 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop