僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「……」
徒歩20分ほどで着いたスーパーに入ると、相変わらず未知の世界に眉を寄せる。周りにいるおばさんらが少し俺を避けて歩くのが不快だ。
男子高校生がスーパーにいちゃ悪いのか!
「祠稀っ」
キノコ類の前で眉を寄せていた俺が振り返ると、有須はおかしそうに笑っていた。
「おまたせ! ごめんねっ。何に悩んでたの?」
「マジ分かっんね。俺カゴ持つから、有須入れてって」
有須が手に持っていた灰色のカゴを取り上げ、代わりに持っていた携帯を渡した。
「……えっと、えのき? 祠稀、これだよ。ほら、えのきって袋に書いてあるでしょ」
バカにしてんのか。文字くらい読めるわ。2種類も3種類もえのき置かれちゃどれ買えばいいか分からねぇんだよ。
店内を熟知した有須に連れられながら、ふたりでスーパーを練り歩く。
有須は凪からの買い物リストメールと比較しながら、次々と食料をカゴに入れていった。
つーか、家帰る前に気付けよな。バカ凪。そして二度と俺に買い物なんざ頼むな。
この場にいない凪に悪態を付いてると、有須が絹豆腐をカゴに入れた。
「これで終わりだねっ! 凪たちもう夕飯作ってるかな?」
「どーせ新しいゲームでもやってんじゃねぇの」
「あははっ。そうかもね」
凪は奇跡的に赤点を取らず、約束通り彗に新しいソフトを買ってもらっていた。