僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
引っ越す先は、実家からだいぶ離れた土地。都会的と言えるだろう街に佇むデザイナーズマンション。
外観も内装も綺麗で、立地条件も最高で、入学する高校にも徒歩か電車1本で通える。
だけど部屋があまりにも広かった。ひとり暮らしをするのに、4つも部屋は必要ない。
親が決めたことだから文句はないし、あたし自身誰かとルームシェアする気でいたから何も問題じゃないけれど。
「……3年間、か」
ポツリと呟いた言葉は鎖となって、胸の奥を締め上げる。それを誤魔化すように目頭を軽く揉んでから、再びパソコン画面を見つめた。
――応募、待ってます。
募集人:Mukou Nagi─―
最後の最後に一言添えてから、祈るようにマウスをクリックしてウェブサイトを閉じた。
……見つかるかな。
どこの誰だっていい。どんな人でもいいんだけど、やっぱり歳が近い人だと嬉しい。
もっと言えば優しくて明るくて、何より自分を、自分の意思を持っていて、裏表のない人がいい……なんて。
意外に求めるものがあるから、未だに同居人が見つかってないんだろう。
それでもやっぱり高校の3年間、共に楽しく過ごせる人がいいんだ。