僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
美しさの代償
◆Side:凪
「なっぎーんっ!」
「え、何その呼び方」
昇降口でひとり立っていたあたしを呼んだのは、オレンジ色の髪をちょんまげにした遊志。あたしが振り向くと、遊志はわざとらしく頬を膨らませる。
「かわいく呼んだだけやんっ!」
「んー……ちょい微妙っ、かな!」
遊志と知り合って1週間は経った頃。ほぼ毎日メールをしていたあたしたちは、放課後遊ぼうという話になり今に至る。
「んーっ、えぇね! 毎日きゃわいいデコメ送った甲斐もあったってもんやわ〜」
「どこ行くー?」
「んなぁ! 無視! 俺の話題スルー!」
ガクッと肩を下げる、一応あたしより2つ年上。
……ほんと遊志って大人しさとは無縁だな。
「ほらほら行くよーっ」
両手で背中を押して歩き出すと、遊志は体重をかけてくる。
「押して押して〜! ぅあっぶねっ!」
両手を離すと、危うく後ろに転びそうになった遊志に声を出して笑った。
「このっ……危ないやろぉー!?」
「あははっ!」
遊志といると、楽しい。