僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「凪って、ココア好きなん?」
グラス一杯にココアを注いで持って来てくれた遊志の第一声に、あたしは反応が遅れた。
「……ん? ココア?」
「初めて会った時もココア奢ってって、言ってたやん」
遊志は自分のメロンソーダを揺らしながら、ココアを差し出してくれる。
お礼を言って、隣に座った遊志を見ながら「ああ」と相槌を打った。
「うん、飲みものでいちばん好きかな」
「ふぅん? なんでなん?」
……、なんでだろう。
デンモクで曲を探している遊志を横目で見ながら、何気ない会話なんだろうなと思う。同時に、なんとなく眉を寄せてしまった。
「好きだった人が、ココア好きだったからかな」
「なんやって!?」
熱心にデンモクを見ていた視線は勢いよくあたしに注がれ、笑ってしまった。
反応されたのが、嬉しくて。