僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「アカン! 飲んだらアカン! 僕のメロンソーダ飲みなさい!」
「あははっ! なんでよ!」
なんだろうあたし。遊志にヤキモチ妬かれて、わざと妬かせて、喜ぶなんて。
「ココア飲んでたら思い出してまうやろ!? アカン! ダメ! 嫌!」
必死な顔してメロンソーダを押し付けてくる遊志を、素直にかわいい人だと思う。
「思い出さないよ」
そう微笑むと遊志は一瞬止まって、ふてくされた顔になる。
「……アカ〜ン。嫌やもん。凪の好きな人が好きだったもんを、凪が今も好きやなんて」
「影響されるって、よくあるじゃん」
「嫌なもんは嫌やもん!って俺、駄々っ子か! ハズッ!」
両手で顔を覆う遊志に声を出して笑うと、指の隙間から遊志はあたしを盗み見る。
「ホンマに思い出さへん?」
「うん、思い出さない」
「ほんならええやっ!」
ニカッと笑って遊志は「歌うでー!」とマイクを持った。その姿に笑みを零しながらも、考えていたのはやっぱり……。