僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「一緒に寝るか?」

「最後が近いから?」


……またそんな目であたしを見る。


真っ直ぐ見つめてくるのは出逢った頃から変わらないのに、いつからだろう。


色んな感情をぐちゃぐちゃに混ぜて、もうどうしようもないと分かっているはずなのに、それでも諦めていない瞳を向けられるようになったのは。


使い慣れたキッチンから1歩1歩進み、そっと彼の胸に手をあて、微笑みながら見上げた。


怒ってる? 苦しんでる? それとも、悲しい?


あたしがいなくなることを少しでも悲しいと、思ってくれる?


「……見つかったのか? ルームシェアする奴」

「今また募集してたの。見つかればすぐ出てくよ」

「……見送ったはずなの娘が、まさかまだこっちにいるとは思わないだろうな」


いいよもう、そんな話は。


今さらこの瞬間を変えることもできなければ、必ず来る明日を変える気もない。



「今までありがとう」


唐突にそう言ったあたしに、クッと喉を鳴らすのは彼の癖だ。


「誰に言ってんの?」


偉そうに、威圧的な声色で言う彼に思わず笑いが零れる。


面白いんじゃない。困るから。


しょうがない人だなって、笑うしかないの。

< 6 / 641 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop