僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「一緒に寝るか?」
「最後が近いから?」
……またそんな目であたしを見る。
真っ直ぐ見つめてくるのは出逢った頃から変わらないのに、いつからだろう。
色んな感情をぐちゃぐちゃに混ぜて、もうどうしようもないと分かっているはずなのに、それでも諦めていない瞳を向けられるようになったのは。
使い慣れたキッチンから1歩1歩進み、そっと彼の胸に手をあて、微笑みながら見上げた。
怒ってる? 苦しんでる? それとも、悲しい?
あたしがいなくなることを少しでも悲しいと、思ってくれる?
「……見つかったのか? ルームシェアする奴」
「今また募集してたの。見つかればすぐ出てくよ」
「……見送ったはずなの娘が、まさかまだこっちにいるとは思わないだろうな」
いいよもう、そんな話は。
今さらこの瞬間を変えることもできなければ、必ず来る明日を変える気もない。
「今までありがとう」
唐突にそう言ったあたしに、クッと喉を鳴らすのは彼の癖だ。
「誰に言ってんの?」
偉そうに、威圧的な声色で言う彼に思わず笑いが零れる。
面白いんじゃない。困るから。
しょうがない人だなって、笑うしかないの。