僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


――――…


「凪、携帯」


皿洗いをしているあたしに、ジャージのままソファーでくつろぐ彗がテーブルに置いてある携帯を指差す。

シャンパンレッドの携帯が、チカチカと光っていた。


「あ、もう10時かっ」


タオルで手を拭ってから携帯を開くと、メールが届いていた。サッと目を通して携帯を閉じ、手を叩く。


「はい! 男の出番だよ!」


そう言ってからすぐ、インターホンがリビングに響いた。


「……来た?」

「来たな」


祠稀がニヤリとして立ち上がり、彗も続く。あたしは弾む気持ちを抑えながら玄関へ向かい、戸口をゆっくり開けた。



「お、おはようございますっ! あの、凪さんのお宅で間違いないですか?」


薄茶のミディアムヘア。ぱっちりとした二重にピンク色の頬。あたしより5センチ以上は低いであろう身長で、凄く華奢な体。


千鳥柄のスカートに、春らしいピンクのニット。白いトレンチコートがよく似合ってる、清楚で可愛らしい女の子が立っていた。


「……いらっしゃい。待ってたよ」


微笑むと、恥ずかしそうに頬を染めながらも笑顔を返してくれた。


「阿 有須です! 今日からよろしくお願いしますっ」



最後の同居人、

阿 有須(いのうえ ありす)がやってきた。

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