僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「まぁ〜……綺麗なとこね」
「うん、予想してたのより広いし綺麗ですっ」
「あは! そうですか? ならよかったです。ここからリビングになります」
リビングに入ると、有須とお母さんは歓喜の声を上げた。
「まだみんな入居したてなんで、必要なものしか置いてないんですけど。有須の部屋はここだよ」
お母さんがベランダの外を眺めに行く中、有須を部屋に促す。
「ていうかね、先に入居してきた人から部屋決めちゃったんだけど……大丈夫?」
不安に思っていたことを尋ねると、有須が控えめに空っぽの部屋を覗いた。
「わ! 充分です! 実家の部屋と同じくらいありますっ」
「そう? もし嫌だったらあたしの部屋と交換でも……」
「いえそんな! この部屋でいいです!」
ぶんぶんと両手を左右に振る有須を、素直にいい子だと思った。
電話してたときも思ってたけど、かわいいなぁ……女の子って感じ。
「ねぇ、有須。敬語使わなくていいよ? ねっ」
「あ、は……うん、分かった……!」
「男共にも遠慮しないで、バシバシ使ってね!」
テーブルやベッドを運んできた彗たちを親指で差し、有須に笑顔を向けてからお母さんに声をかける。