僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「長々とごめんなさいね。凪さんみたいなしっかりしてる方が同居人で、本当によかったわ」
有須の荷物を運び終わり、お母さんは帰ることになった。玄関まで、4人で見送る。
「こちらこそ! 有須みたいないい子が同居人になってくれて嬉しいです」
「ふふっ。有須、しっかりね。たまには電話するのよ? 休みには帰ってきなさいね? お父さんがうるさいんだから」
「も〜。分かってるよぉ……」
有須はうんざりしながらもどこか嬉しそうで……家族って、こんな感じなんだろうなと頭の隅で思っていた。
「では、失礼します」
「はいっ! お気をつけて!」
深々と頭を下げられ、有須以外の3人が腰を折る。
有須はお母さんが見えなくなるまで、ずっとその背中を見つめていた。
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