僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「あ、あの……」
「だいたい祠稀はあーだこーだって、文句ばっか!」
「……け、喧嘩は……」
「俺がいつ文句言ったよ! 凪の人使いが荒過ぎんだろーが!」
「やめ……」
自分の声が届かないことを悟ったのか、有須はしゅんと肩と頭を同時に落とす。
その様子をただひとり見ていた俺は、思わず顔を背けてしまった。
小動物みたい……。
「ん? 何笑ってんのよ彗」
「え? 笑ってんの? それで?」
凪たちが気付くが、声のない笑いを止まるのには時間がかかってしまう。
やっと止まって顔を上げると、有須を含む3人が不思議そうな表情で俺を見ていた。
「……あのね、かわいくて」
「うん? ごめん、ちょっと分かんない」
「省略し過ぎだっつーの」
そう眉を寄せる凪と祠稀から、俺は有須に視線を移す。
「……今なら言えるよ?」
微笑むと有須はキョトンとしてからすぐ、頬を赤らめた。見られてたのか、と恥ずかしいのかもしれない。