僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「え? 何よ。なんでここだけ通じてんの?」
「何が今なら言えんだよ」
「だからぁ! その言い方がビビらせてんだってば!」
「はあ!? 俺は元からこんなんだからしょうがねぇべや!」
案外凪も祠稀も似た者同士だと思う。
「あ、のっ!」
また始まったふたり喧嘩に割り込む、必死な声。俺も凪も祠稀も、一斉に有須へ視線を向ける。
「け、喧嘩はしちゃダメ……です」
語尾にいくにつれて小さくなる声は、有須の体さえも小さく見せた。
……まずい。また笑いそう。
「何この子……かわいい……」
「てかそれ、突っ掛かってくる凪に言ってんだよな?」
「ちょっと待て! あたしだけ悪者か!」
「喧嘩はしちゃダメなんだとよ~?」
ニヤニヤと口の端を上げる祠稀に、凪はグッと口を噤んで我慢してる。
「……分かった、はい。喧嘩しないよ、大丈夫! ほらっ!」
「今の凪の顔まじウケる」
「はぁあ!?」
百面相に近いくらいコロコロと表情の変わる凪に祠稀は笑い、有須もふたりの顔を交互に見て忙しそうだ。