僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「あ、あの、でも……その。だからあたし、ひとり暮らしとか、ましてや誰かと同居なんて……本当に向いてないって、思ってて……」
笑いを堪えた祠稀が、かわいいと言った凪が、有須が必死に紡ぐ言葉に耳を向ける。
一生懸命に頑張ってるのが、赤い顔で、震えている体で、これでもかとばかりに伝わってきたからだろう。
「でも、やってみようって、思ったんです。逃げてばかりじゃ、いられないから……自分を変えて、なんて大袈裟かもしれないけど……変わりたくて……」
ぽそぽそと話す声は小さく、震えていたようにも聞こえたけれど、意思のある強い言葉だった。
俯きがちだった有須は完全に顔を下に向けてしまって、俺はその姿をジッと見つめる。
“変わりたい”
それは確かに、俺がこの家に来る前に思っていたことだった。
「……そっか。じゃあ有須は、勇気出してこの家に来てくれたんだね」
凪の穏やかな声に、有須はゆっくりと顔を上げる。不安げに、窺うように。心なしか、泣きそうな顔を。