僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「俺料理できないっつーの。なぁ彗……ってお前! へったくそ!」
まな板の上で野菜を切っていた彗に突っ込めば、凪が「ああ……」と嘆くような声を出す。
「す、彗……輪切り知らなかった?」
彗が切っていたキュウリを持ち上げると、輪切りになるはずだったものがべローンと全部繋がっていた。
……さすがの俺でもこんな下手じゃねえわ。
「あーあ……やっぱ彗に料理させるのは無謀だったかなぁ」
鍋をかき混ぜながらぼやく凪に、彗はザクザクとレタスだかキャベツを切りながら答える。
「……俺に包丁持たせるのが、間違ってる」
言いながら全く凪を見ないあたり、彗は凪に逆らえそうにない。
「なぁ、マジで家事ってローテーション決定? 俺も料理できねぇよ」
「ったり前でしょ!? 毎日ご飯作れって!? 無理だしそんなにレパートリーないから! ねぇ有須っ」
「!!」
凪の隣で炒め物をしていた有須はビクッと肩を揺らした。