僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「いただきまーす!」
すっかり春の夜は更けて、4人で食卓を囲む。俺の隣に彗、その隣に有須、凪と続く細長いL字型のテーブルには色々な夕飯が並んでいた。
「ちょっ、結局繋がったままか!」
凪がサラダの皿から、輪切りになるはずだったキュウリを箸で摘んだ。
「……食べれば一緒じゃん」
「食べ辛いわ!」
「で、でも美味しいよ! サラダッ」
至って普通のサラダだけどな。そう心の中で突っ込んで、凪が作ったポトフを口に含む。
……昨日も思ったけど、凪って料理うまいな。
有須が作った鶏肉の炒め物もうまいと感じながら、ふと昼間のことを思い出す。
「そういえばさー。このマンション凪の爺ちゃんの所有ってマジ?」
有須の母親に凪が説明していたから、少し気になっていた。
「そうだけど?」
「それって彗の爺さんでもあるわけ? ドリームマンションて、名字から取ったんだろ」
有須がなるほどって顔をしたのを視界の隅で見ながら、凪が首を振ったのを確認する。
「違う違う。あたしのお父さんと彗のお父さんは確かに兄弟で、名字に夢って入ってはいるけど」
「……このマンションは、凪のお母さんのお父さんの所有物」
「お母さんの名字って何だったかな……まあそれは置いといて。お爺ちゃんがね、結婚祝いってことでちょうど新築したこのマンションにドリームって付けたんだよ。ベタすぎるよね~」
ああ、そういうこと。