僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


テーブルの上を片付けたり歯磨きをしたあと、みんなでドアの前に立つ。なんだか無性にドキドキした。


「じゃ、おやすみ!」

「おや〜」

「……すみ」

「おやすみなさいっ」


体を反転させ、それぞれ自室に入る。さっきまで騒がしかったリビングが嘘のように静寂になった。


「ふぅ……」


ベットに腰掛け、今日1日高鳴り続けた胸を撫で下ろす。


このマンションに来た時も、エレベータに乗ってる間も、インターホンを鳴らす時も、凪たち3人が出てきた時も、ずっとずっと緊張していた。


……だけどそれ以上に嬉しかった。


あたしの拙すぎる言葉で、伝わったから。凪も彗も祠稀も、あたしの気持ちを汲み取ってくれたから。


勇気を出して、ここに来てくれたんだねって言われた時。本当に泣きそうになって、勇気を出してよかったと心の底から思ったんだ。


凪が言った家族同然という言葉が、胸をくすぐる。なんだか照れくさい。でも心地いい。


きゅっと胸が締め付けられて、あたしは布団に潜って目を閉じた。


忘れずにいよう、今日のこと。

いつまで経っても覚えていたいから。


――大丈夫。きっと大丈夫。


過去のあたしとは、もうサヨナラできた。



今日から幸せな日々の、始まり。


.
< 89 / 641 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop