僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
テーブルの上を片付けたり歯磨きをしたあと、みんなでドアの前に立つ。なんだか無性にドキドキした。
「じゃ、おやすみ!」
「おや〜」
「……すみ」
「おやすみなさいっ」
体を反転させ、それぞれ自室に入る。さっきまで騒がしかったリビングが嘘のように静寂になった。
「ふぅ……」
ベットに腰掛け、今日1日高鳴り続けた胸を撫で下ろす。
このマンションに来た時も、エレベータに乗ってる間も、インターホンを鳴らす時も、凪たち3人が出てきた時も、ずっとずっと緊張していた。
……だけどそれ以上に嬉しかった。
あたしの拙すぎる言葉で、伝わったから。凪も彗も祠稀も、あたしの気持ちを汲み取ってくれたから。
勇気を出して、ここに来てくれたんだねって言われた時。本当に泣きそうになって、勇気を出してよかったと心の底から思ったんだ。
凪が言った家族同然という言葉が、胸をくすぐる。なんだか照れくさい。でも心地いい。
きゅっと胸が締め付けられて、あたしは布団に潜って目を閉じた。
忘れずにいよう、今日のこと。
いつまで経っても覚えていたいから。
――大丈夫。きっと大丈夫。
過去のあたしとは、もうサヨナラできた。
今日から幸せな日々の、始まり。
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