僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「……颯輔(そうすけ)さん、元気?」

「何いきなり。元気だよ、ウザく感じる程度には」

「……緑夏(りょっか)さんは元気?」

「元気でいてくれないと困る」

「そう……なら、よかった」


何がいいのか分からなくて、頬杖をつきながら彗を見下ろす。


あたしの親のことを聞いてくるなんて、再会してから初めてだ。


くるくると幾度ももてあそばれる髪は、スパイラルが掛かってるからそんなに手触りがいいと思えない。


彗の綺麗な金茶の髪のほうがサラサラしてて、よっぽど手触りがいいのに。


「……彗?」

「んー?」

「寂しい?」


あたしの髪をいじる手が止まり、彗はその手を力無くベッドに落とした。


なるべく聞かないようにしていたんだけど、今は逆に聞いたほうがいい気がした。


彗が弱音を吐くところなんて、見たことがないから。

< 92 / 641 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop