僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



……どうりで、返事が遅かったわけだよね。


別々になってから中学2年生までの間、あたしと彗は手紙を出し合っていたのに、ある日突然、彗からの返事がパタリと止まった。


徐々に返事が遅くなって、ついに返ってこなくなったのは、彗が人と関わるのを拒んだから。


親族はあれほど引き取るのをためらっていたのに、180度意見が変わった理由はひとりぽっちの彗に残った、遺産が目当てだったんだ。


彗に気に入られようと媚びを売る大人たちの姿が、嫌になるくらい思い浮かぶ。



彗はあたしと離れてから6年間、どんな思いで生きてきた?



「……有須のお母さん、いい人だったね」

「そうだね……」

「家族って、あんな感じかな」


表情も変えず話す彗に、胸が抉られるように痛んだ。


彗が本当の両親に育てられて、家族の温かさを感じれたのはたったの5年間。その記憶すら曖昧だと思う。


きっと甘えることも我が儘を言うこともできずに、高校生になった彗。


その代償はある? あるとしたら、そのつらさはどれくらい?

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