僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
分からない。計り知れない。どうしてあたしは、すぐに気づいてあげられなかったんだろう。
彗の手紙がどんな状況で書かれていたかも知らずに、返事がくることに浮かれて、ただそれだけで幸せで。
……たった5年でも、確かに家族だったのに。
いつも一緒にいた。
いつ、どんな時でも。
毎日毎日ふたりで色んなことをして、話して笑って泣いて怒って、数えきれないほどのものを共有したのに。
「ねぇ、彗? ……これからさ、たくさん楽しいことあるよ。いっぱい、楽しいことしようね」
「……うん」
「あたしがいるじゃん」
「……祠稀も有須もいるもんね」
「そうだよっ! 超楽しくなりそうじゃない? てか既に超楽しいよね」
「ふっ……だね」
優しく笑う彗の頭を撫でると、昔を思い出す。
……色褪せてない。
あの頃も、手紙で繋がっていた時も、空白の時間も。
あたしは彗を忘れた日なんか、一度だってないよ。