僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「子守歌唄ってあげる!」

「音痴無理」


バシン!と彗の頭を思いきり叩く。


「痛い……絶対細胞死んだ……」

「誰が音痴だバカ彗」

「ジョークなのに」

「怒るよ」

「もう怒ってるじゃん……」


ムーッと睨み合って、どちらからともなく視線を逸らした。こんなくだらない言い合いは、何時間でも続けられることを知ってるから。


「ほらほら、もう寝るよっ」

「……なぜ?」

彗を押しのけて、あたしは布団に潜り込む。

「添い寝? 昔よくしたじゃん」

「……蹴らないでね」

「寝相悪いって言ってんの?」

「……おやすみ」


彗は答えることなく、ブラックライトを消して布団をかぶった。そしてすぐに、どちらからともなく繋がれる手。


ふたりの体温が温かくて、懐かしくて、涙が出そうになる。


しばらくすると彗の寝息が聞こえて、そのかわいい寝顔が昔のままで、たまらなく愛しくて、彗の胸に顔を埋めた。


……彗、甘えていいんだよ。


我がままも言っていい。怒って、泣いて、笑顔を見せて。


あたしと彗が再び出逢ったのは、きっと意味あることだと思うから。あたしが彗を、支えてあげる。


祠稀でもいい。有須でもいい。


この場所に集ったあたしたちをどうか、信じて。


悲しいことがあっても、つらいことがあっても。この場所に戻ってくれば、きっと全てが癒やされるよ。


幸せになるために、幸せであるために。あたしたちは集ったんだよ。


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