僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
新しい空に夢が燥ぐ
◆Side:彗
小鳥の囀りで目が覚めた。
まだはっきりしない頭のまま辺りを見渡して、部屋の明るさからそんなに早く起きたわけじゃないことを察する。
ぼんやりする頭に、まだ重い瞼。ふと自分の胸あたりに温もりを感じて、そこへ視線を移せば凪の姿があった。
俺の胸に顔を近づけて、すーっと寝息をたてる凪の頬を撫でる。
「……」
凪の寝顔を見ながら思った。こんなに穏やかな朝が、今まで何回あっただろうって。
この家に来るまで、毎日はただ苦痛でしかなかったから。
俺がこの家に来た時、凪と買い物に行った時、俺と凪は色んな話をした。
手紙の返事を出さなかった空白の時間、俺は何をしていたのか、どんな状況だったのか。
それを話すにはあまりに簡単で、大した時間はかからなかった。
だって俺は、どこに行っても同じだったから。