僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


財産目当ての親戚の家を転々とし、それを分かっていた俺は無愛想極まりなく。時にはハッキリと、財産をよこせと言われたこともあった。


ただそれだけのことを長々と話す気になれなかったのも本当だけど。


淡々と喋る俺の言葉は凪はじっと聞いてくれて、でも悲しそうだった。


言葉はなくとも、凪が何を想ってくれていたのかは察したつもり。


ひたすら自分の存在意義を考えていた毎日。そんなものは見つからなくて、膨らむ死への欲求を消す毎日。


でも、もう大丈夫な気がした。凪がいるから。


……俺が返事を出さなかった間も凪は手紙を出し続けてくれた。


だから俺はほんの2年前、1年前の凪の状況を知ってる。


親戚の間を回って回って届く凪の手紙は楽しそうで、たまに愚痴を零して、なんてことない話題が中心だった。

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