グランディオ
コンコンとノックされる部屋のドア。まだしっかりと瞳を開けていない状態で起きていたギルスは、軽く顔を洗って目を覚ました。どうぞ、とドアの前にいる者に対して声をかけると、ゆっくりと開けられて、宿屋の主人が顔を出す。

下でゼノスの使いと云う者がいるらしく、この早い時間に訪ねても大丈夫かどうか見に来たらしい。ギルスに許可を得ると、主人はドアを閉めて受付へと戻り、それを使いの者に伝えに行った。

数分も経たぬうちに再びドアがノックされる。今度はこちらからドアを開くと、ギルドでゼノスの元へと案内された時に後ろに付いていた男が旅支度を整えて待っていた。

「急ぎますので簡単に説明させていただきます。これからゼノス様は古代遺跡のあるプラバンスへと赴きます。何かあったときはこちらの通信機でお話をとのことです。紙の字語について調べる、といえばわかると申されておりました。何か分かり次第、ゼノス様自身から連絡を差し上げるとのことです。では」

差し出されたものは見たこともない機械で使い方は分からない。通信と聞けば、遠くでやり取りするものだということは理解できたが。

どうやら、ギルスにあったためにそれを調査する必要が出来たような動きようだ。だが、最高権力を使わねば知れぬことをどう調べようというのか。何か考えがあるのだろうかと、疑問を持ってしまう。

ドアに向いたままのギルスは、後ろを振り返ると眼をこすりながら身体を起こすルビアに気付き、渡された通信機を一旦机の上に置いた。

「ギルス、何をしてるの?せっかく宿屋に泊まったのに起きてたの?」

「ちゃんと寝たよ。ルビアよりは短いけどね。いつもよりぐっすり寝てたから、起こさないようにしたつもりだったんだけど」

「自然に起きただけ、外と違って起こされないからちゃんと寝れた」

ポンポンと優しく手のひらをルビアの頭に置く。まだ眼を開けきれていないルビアの顔は、いつかのニニアスに重なり、微笑みがこぼれた。

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