グランディオ
光の中で漂う影は次第に薄れ、虚無となって存在は消失した。三人とも絶望の淵に立たされたかのように堕落し、戦闘する気力を失ってただ立ち尽くしていた。

「まったく、死の瞬間まで目を閉じるなと教わらなかったのか?」

はっとその声に反応する三人。どこから現れたかも解らぬ男がティナを抱えて木の上に立っていた。傍らには小さな女の子が一人、落ちないように彼にしがみついている。

女の子も脇に抱えると、木の上から飛び降り、気を失っている彼女を仲間に預けて、少女にも下がっているよう促した。

「どんな経緯でアトラスグレイと戦うことになったかは知らないが、無茶はよくない。今ので気力を失っただろう。君らも下がってな」

彼の前方周囲が歪み始めると、無空間から武器を取り出し、空間は元に戻った。

体長三メートルもあるアトラスグレイを一刀両断できるほどある刀身。黒く染められた内に秘められた銀の波紋。光を切り裂くには申し分ない闇の刀。

アトラスグレイは、近づいてくる男に対して威嚇し、牙を剥き出す。槍での一撃が効いているのか、口の中は血で溢れていた。威嚇に動じない男に、全身全霊を懸けた光の波動が集結する。先ほどよりも球が大きく、感じる力がとてつもない。

男は刀を抜刀するように構え、距離を置いた。

三人の内の一人が言った。あれでは間合いが足りない、と。

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