ハピネス 〜女になった私〜
車が細い路地に入ると、もうノブくんの実家が近い事に気付く。
車から見るその町は、家と家の間がすごく近くて、近所のおばさんがほうきとちりとりを持って、あちこちで立ち話をしている。
私がイメージする下町の雰囲気そのもの。
「さぁ〜未希、いよいよやでぇ。大丈夫?」
「・・・うん。」
車は一件のお家の前で止まった。
二階建てで、コンクリートの外壁。
表札には、【三橋】と書かれていて、その下には今もお兄さんとノブくんの名前がある。
ドキドキし過ぎて、胃がキュウっと痛くなった。
車から荷物を下ろしていると、バタバタと家の中から足音が聞こえた。
一瞬、身を固めて振り返ると、小さい男の子が走って出て来た。
「のぶぅ〜!!」
「おお〜やっちん元気かぁ?」
笑顔でその子を抱き上げるノブくんと、嬉しそうに抱き付く男の子。
「俺の息子の大和。5歳。」
「あぁ〜そうなんだ。」
ノブくんは男の子を抱っこしながら私を見る。
「やっちんどう?ノブのお嫁さんやで?」
「かわいい」
無邪気な笑顔に、救われる。
「大和くん、こんにちは。未希です。」
私が大和くんの頭に触れると、照れたようにノブくんの首に顔をうずめた。
・・・可愛いな。
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