ハピネス 〜女になった私〜



車が細い路地に入ると、もうノブくんの実家が近い事に気付く。



車から見るその町は、家と家の間がすごく近くて、近所のおばさんがほうきとちりとりを持って、あちこちで立ち話をしている。


私がイメージする下町の雰囲気そのもの。



「さぁ〜未希、いよいよやでぇ。大丈夫?」



「・・・うん。」




車は一件のお家の前で止まった。



二階建てで、コンクリートの外壁。



表札には、【三橋】と書かれていて、その下には今もお兄さんとノブくんの名前がある。



ドキドキし過ぎて、胃がキュウっと痛くなった。



車から荷物を下ろしていると、バタバタと家の中から足音が聞こえた。



一瞬、身を固めて振り返ると、小さい男の子が走って出て来た。



「のぶぅ〜!!」


「おお〜やっちん元気かぁ?」



笑顔でその子を抱き上げるノブくんと、嬉しそうに抱き付く男の子。



「俺の息子の大和。5歳。」



「あぁ〜そうなんだ。」


ノブくんは男の子を抱っこしながら私を見る。



「やっちんどう?ノブのお嫁さんやで?」


「かわいい」



無邪気な笑顔に、救われる。



「大和くん、こんにちは。未希です。」


私が大和くんの頭に触れると、照れたようにノブくんの首に顔をうずめた。



・・・可愛いな。




.
< 204 / 230 >

この作品をシェア

pagetop