ハピネス 〜女になった私〜
バイトが終わるのは午後5時。
その時間に合わせて、ノブくんがお店の前まで車で迎えに来てくれる事になっていた。
3分おきくらいに時計ばかり見てしまうのに、時間は全然過ぎてくれない。
「未希、お疲れ!もう上がっていいよ〜」
ようやく迎えた5時に、今度は時間が止まればいいのにと思ってしまう。
スタッフルームに戻った私はすぐさま携帯をチェックする。
【もう着いてるから。スタバの前に止まってる黒い車な。】
数分後にはノブくんに会える。
嬉しい様な、少し怖い様な・・・
いつも以上に念入りにメイク直しをしながら、気持ちを落ち着ける。
鏡に写った自分の顔。
大丈夫だよね?私、ちゃんと女の子だよね?
ドキドキは最高潮まで達していた。
レジにいる香織さんの元に行くと、
「未希〜楽しんでおいでね!」
優しく笑って私の髪を耳にかけてくれた。
「香織さん、どうしよ・・・何か怖くなっちゃった。」
「大丈夫。未希がこんな風に男の人と出掛けようって思えた事は、すごくいい事なんだよ?深く考えずに、素直に楽しめばいいから。」
「・・・はい。」
香織さんに背中を押してもらって、少しだけ勇気が出た。
店の外まで見送ってくれた香織さんに手を振って、私はゆっくり歩き出す。
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