人魚王子
そういえば陸にいる代償だったんだ、と今更フィアンは思い出しました。

今此処で悲しんでいる少女に歌えないなんて、辛い事です。


「どうかしたの?」

「ううん、何でもないよ」

「そう? でも元気ないね。そうだ。一緒に人魚姫の歌を待とう?今日も明日も明後日もずっと」


暗くなるフィアンに少女は提案しました。フィアンは無駄だと思っていました。

それでも少女に賛同したのは新たな罪滅ぼしなのかもしれません。


「僕はフィアン。フィアン・シーグ。君は?」

「私はロッサム。ロッサム・リンガー。よろしくね、フィアン」


フィアンは思いました。自分の歌を好きになってくれた彼女が、自分のお姫様だと。
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