人魚王子
「ロッサム、もう良いよ。僕の事を気にしないで帰って? お幸せに」

「でも……っ」

「折角迎えに来てくれたんだよ? 君を心配して。良い人じゃない?」


その言葉に満足げな王子さまはロッサムを連れて帰って行きました。

それは少し強引でしたが、フィアンはそれで構わないと思いました。

そうでなければロッサムは帰ろうとはしないからです。


(ロッサムは僕のお姫さまじゃなかった……)


もうこれ以上陸にいては歌えない事に耐えられずに死んでしまう。

自分の歌声を好きになってくれる女性もうないでしょう。

そう諦めたフィアンは海へと帰りました。もういないロッサムに別れを告げて。
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