7月7日、逢いたくて


「…そんな事より、」

と、イライラしてるあたしに
おきちゃんは何事もなかったかのように、話を持ち出して来た。



「また来てますよ?」

「え?」

「ラブレター!」


語尾にハートマークをたっぷり備え付け
おきちゃんが差し出したそれを、あたしは素早く奪い取る。



食い入るように文字を辿っていけば、相変わらず達筆な字が視界を埋めてゆく。



「これで3通目、でしたっけ?」

「…4通目だよ。」

「ひゃ~、熱狂的ぃーっ!」


自分の事のように
きゃーきゃーと騒ぎ立てるおきちゃんを尻目に

あたしはいつもの如く、感想の項目を心の中で繰り返し読み返した。


そしてこれまた相変わらず、とでも言いたいのか
一方的すぎる文面。




――笹原 織葉さま

夜だけでも七夕は、晴れるといいですね――




「…それだけ?」


わかってはいるけれど
裏面を見ても、もちろん名前など記載されてない。


それでも確認してしまうのは
この人が書く文字から、優しさが伝わって来るからだろう。



…多分。







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