7月7日、逢いたくて


ぐしゃぐしゃになった顔で見上げれば

「催涙雨(さいるいう)って言うんですよ。」

と、館長は言った。



「織姫と彦星が逢瀬のあとに流す惜別の涙、または逢瀬が叶わなかった時の涙、とも言われています。」

「………。」



どうして、今
その話を館長がするのかはわからなかった。

でも、呼吸もままならないあたしは、黙ったまま館長の言葉に耳を傾ける。


不思議と、心が落ち着いてゆくのがわかった。




そんなあたしを見て、館長が優しく微笑む。


まるで娘を…
つぐみさんを見る時のような柔らかい顔で。



「最初に僕が織葉さんに会った時、言った言葉を覚えてますか?」

「……え…?」

「プラネタリウムを見て、あなたが泣いていた時です。」


そう言われ、ふと思い出す。





『泣かれている方を見たのは、あなたで二人目です。』



…まさか、あれは―――。



答えを求め、館長に視線を向けると
館長は一度だけ頷き、言った。




「一人目は、彼方くんでした。」






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