7月7日、逢いたくて


それは初めて聞かされる、彼方の過去。



「彼方くんがここのプラネタリウムに来たのは、彼が中学生の時です。」

「…そんなに、前から…。」

「ええ、彼はいつも一人でプラネタリウムを見に来てました。」


館長はゆったりとした口調で言う。
そして、あたしから少し離れた座席に腰を下ろす。


投影機を囲むように並べられた客席は、離れていても館長の声がよく聞こえた。



「その日も、ちょうどこんな雨の日で…。お客さんも全く入らなくてね。」

はは、と思い出したように笑う館長。


その目が
どこか寂しそうに見えるのは気のせいだろうか。


あたしはよそ見する事もなく
館長の横顔に目線を預ける。



「そんな雨の中、彼方くんはここへ来ました。」


でも、と言った館長は
そこで躊躇ったように、目線を下げた。

あたしの心に、不安という二文字が浮かび上がる。



「その日の彼方くんは、いつもの彼とは違いました。」

「…え?」

「……びしょ濡れだったんですよ。こんな雨の中、傘を差さずに来たんです。」


だから館長は尋ねたそうだ。

“傘はどうしたんだい?”と。



すると、彼方は虚ろな目でこう答えたという。




『お父さんとお母さんが、星になっちゃったんだ。』







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