7月7日、逢いたくて


ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。

まるで鈍器で殴られたような衝撃が、脳裏を駆け巡ってゆく。



その言葉に
館長は何も言わず、彼方をプラネタリウムに招き入れ

彼の為だけに上映をしたんです、と言った。



「…その上映が終わった後でした。泣いてる彼方くんを見たのは。」


館長が、寂しそうに瞳を揺らし
メガネをかけ直す。


彼方の両親は
買い物途中で不慮の事故に巻き込まれたらしい。

それはちょうど12年前の今日。



―――7月7日の事。





あたしは何も言えず、ただ床に視線を落とした。



そしてふいに考えてみる。

言われてみれば、あたしは一度も彼方の口から家族の話を聞いた事なかった。


あんなに一緒に居たのに。

ただの一度も、彼方は話さなかった。




しばらく沈黙が続き
意を決したあたしは、ゆっくり顔を上げ

館長へ尋ねる。



「…彼方は…。その後…どうしていたんですか?」


中学生で両親を亡くした彼方。

それならば今まで、どうやって生きていたのか。




知りたかった。

彼方の事を、全て。




知りたかったんだ。





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