純愛バトラー
 就寝時間になり、オレは宛がわれた私室へ帰された。
 ものすごい脱力感が体を襲う。

「……ありえねえ」

 布団に倒れこむと、自然と独り言が漏れた。拒絶される可能性を全く考えて居なかったほど、オレも阿呆ではない。

 しかし、あんな切り返しをしてくるなんて予想の範囲外だ。例えるなら、丸腰の相手に近づいて行ったらいきなりバズーカ砲で撃たれたかのようなショックを受けたぞ……。

 あの後絵理は、オレのために、寂しい夜の過ごし方・男性版を調べてから休むと言い張ったが、全力で辞退しておいた。

『大事な執事のために、私もできる事をしたいのだ』と真剣な眼差しで言われれば言われるほど、地獄に突き落とされるんです。

 昔書いた黒歴史にしたいほど恥ずかしいポエムを発掘され、大声で朗読された後に、それを皮肉でなく全力で褒められた時の気持ちを想像してみるといい。オレの味わっている気持ちの何割かが解る筈だ。
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