純愛バトラー
「それで、聞いたわよ。叢雲君と喧嘩したんですって?」

 どうやらこちらが本題だったようだ。
 千沙子の声からからかうような調子が消え、真面目な口調になる。

「青司から聞いたのか?」

 この手のことを長船が吹聴する事はまず無い。青司本人から聞いたと考えるのが妥当だろう。

「気にしてたわよ。『嫌われるような事したのかな』って。理由なんて言える筈もないし、適当に慰めの言葉をかけておいたけど」

「……それはどうも」

「気持ちを持て余してイライラするのはわかるけど、理不尽な八つ当たりは周りを戸惑わせるだけよ。
 その挙句に自棄食いなんかして自爆して。
 みっともないったらありゃしない」

 正論だが容赦ない言葉を浴びせられ、オレは辟易した。
 大体、何で千沙子にここまで言われなきゃならんのだ。
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