純愛バトラー
「欲しいなら奪え、か。相変わらずだな」

「当然でしょ。口をあけて待ってるだけで欲しい物が転がり込んでくるなんて、そんな都合のいい話がどこにあるの」

 そう言って千沙子はにやりと笑った。
 いつかの絵理のように。

「戦う覚悟はできたみたいね」

「おせっかいな女だな。お前も」

「あら。別に貴方のためじゃないわ。さっさと玉砕してきてもらわないと、私が困るのよ」

「……お前、策士にはなれないタイプだな」

 口を尖らせて言う千沙子に、オレは半分呆れて言った。

「傷心のオレに付け込む気なら、別に今だっていいだろ」

「冗談じゃないわ。いくら貴方が相手でも、慰み者にされるのなんかまっぴらよ。
 ……でも、御剣さんへの気持ちにけりがついた後なら、考えてあげる」

「うわぁ、可愛くねー」

「そうかしら? でも、陣は可愛いだけの女になんか興味ないでしょ」

 ふふん、と千沙子は勝ち誇った笑みを浮かべた。
< 164 / 401 >

この作品をシェア

pagetop