純愛バトラー
「それ、どういう意味よ! まさか私がカスだって言いたいの!?」

 千沙子は涙目になって声を張り上げた。
 先ほどの威圧するような雰囲気はどこへやら、喧嘩して言い負かされた子供のようになっている。

「そういうわけじゃない。まだな」

「……まだ?」

「勘違いしてるようだから言っとくけど、オレは別に可愛い女が嫌いなわけじゃないぞ?
 女王様気取るのもいいけど、もう少し可愛げがないと、嫁の貰い手いなくなるんじゃね?」

 世の中には、気位の高い女に罵倒されて喜ぶ男もいるが、あえてそこには触れない事にした。

 千沙子は涙目のまま頬を膨らませていたが、やがてぷいとそっぽを向いて、小さい声でこう言った。

「……善処するわ」

 そんな様子を見て、思わず『かわいい』と思ったのは、本人には内緒にしておこう。
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