純愛バトラー
 そんな中で、全く動じていない人物が一人。

「ほう。リンカーンのストレッチリムジンか。
 歓待用の内装としてはなかなかの雰囲気だな。地元ならいざ知らず、遠方の地でこのような高級車を事も無げに用意できるとは、さすがは伊勢村の令嬢、か」

 絵理は感心した様子で感想を述べると、革張りのソファーに腰を下ろした。

「ホホホ。御剣のご令嬢から褒め言葉をいただくなんて、光栄だわ」

 千沙子は満更でもない様子で笑うと、運転手に車を出すよう促した。
 滑り出すようにリムジンが走り出し、窓の外の景色が流れ出す。
 さすがは高級車、全く揺れないしエンジン音も極めて静かだ。
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