純愛バトラー
「伊勢村の別荘に車を回して。フェリーは手配してあるわ」

「ちょっと待て、フェリーって何だ、フェリーって!」

「何って、旅客船兼自動車渡船のことに決まっているでしょう。それ以外に何があるの」

「オレが言いたいのはそういう事じゃなくてだな、何でフェリーが必要なのかって……」

 ここまで言った段階で、オレは千沙子の返答を半ば予想できてしまった。
 それでもあえて言ったのは、オレのような庶民にはやや現実味が薄かったから、と言っておこう。

「離島の一つを丸ごと買いきって、そこに別荘を建てたからよ。うるさい観光客もいないし、必要物資はヘリで届けてもらえるから大丈夫」


 ほら、やっぱり。
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