純愛バトラー
 何となく皆から離れて波打ち際を歩いていると、独り満天の星が輝く夜空を見上げている青司がいた。

「よお」

 オレが声をかけると、一時(いっとき)こちらを振り向いたが、すぐにフイっと夜空に視線を戻してしまった。

「会長は皆と花火はしないんですか」

 夜空を見上げたまま、空虚なトーンで青司はオレに問いかけた。

「お前こそ」

 オレは何となく青司の隣に立って、波が寄せるたびにキラキラと光を反射する海を見ていた。

 青司は一瞬返答に詰まったが、深く息を吐き出すと、ためらいがちに話し始めた。

「場違いのような気がして」

「へーえ。何でまた」

 青司がこちらを振り向いた気配はなく、オレも視線を固定したまま。

 潮騒と、夜風と、空と海の瞬きが二人を包んだ。
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