純愛バトラー
 オレは、そんな絵理の頬を優しく撫でた。

「悪い。心配かけたな」


 もっと気の利いたことを言いたかった。
 でも、なんだか胸の奥に言語機能を著しく鈍らせる甘い痛みが走り、それ以上の言葉が出てこなかった。

「解ればそれでよい。青司、そなたもだぞ!」

 絵理がそう言うや否や、青司は絵理の腕を取り、自分自身に引き寄せた。
絵理は勢い余って青司の腕の中にすっぽり納まり、胸に頬を寄せる形になった。

 そんな絵理の髪を撫でて、青司は一言。

「心細い思いをさせて、ごめん」

 そう絵理に謝罪した後で、オレの方をちらりと見やり口元に笑みを浮かべた。
 ……コノヤロウ。

 絵理は瞳をぱちくりさせた後で青司を見上げ、首関節がうまく動かなくなった人形のような動作で周囲を見渡した後、やっと自分の状況を認識したようで、一気に顔が赤くなった。
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