純愛バトラー
 少しためらったが、オレはそのまま絵理の手をとり、指を絡ませた。絵理が不思議そうな顔をしてこちらを向いたのがちらりと視界に入ったが、気付かないふりをしてそのまま花火を見続けた。

 絵理も無理に手を解こうとはせず、やがて花火に視線を戻した。

 左手から伝わる温もりが胸の奥を甘やかに締め付け、その感覚が全身を支配していく。

 手を繋ぐ。

 ただそれだけの些細な行為なのに。

 耳の奥で響いているのは、空を彩る華の開花の音か、それとも自分自身の鼓動の音か。

 一瞬の煌めきを残し、儚く散っていく花を見ながら、オレはささやかな幸せを感じていた。
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