純愛バトラー
 同行しているオレも、屋敷で着ている執事用の制服ではなく、カジュアル系の私服だったりする。

 対面に座っている女性の二人組が、こちらをちらちら見ながら何か話している。

 断片的に聞こえてくる会話はオレの容姿への賛辞。
 こんな事はもう慣れっこだ。

 絵理はと言うと、楽しそうに窓の外を眺めていた。電車から見える景色が好きなのだろう。

 目的の駅に着き、改札を出た。はぐれないように、絵理の手を取る。

「もう私は子供ではない。手など引かれなくても一人で歩けるぞ」

 色気もそっけもない反応だ。

 色気のある反応なんか、最初っから期待してないけどな。

「はぐれて何かあったらオレの責任になるだろうが。このあたりは混雑してるんだから我慢しろ」

 お望み通り、二人きりのときは態度を取り繕うのをやめた。
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